夫婦が別れる時、住み慣れた住宅をどうするかという問題があります。
「せっかく苦労して手に入れた家だから売りたくない!」
「いや離婚するのだから家など売ってしまえばいい」
などという感情的な問題もさる事ながら現実的な問題も考慮せざるを得ません。
離婚する時に住宅を売る3つの理由
1、財産に住宅が占める割合が高い
夫婦が離婚で財産分与しようとする時、不動産(住宅)の時価が数千万円にも昇るのに対して動産(貯金や家財)の総額が著しく少ないというケースです。
仮に財産を50%ずつ分けようとすると、住宅の価値が高い割合を占めていて売却せざるを得ないという事になります。
2、夫婦いずれかの資産が足りない
離婚しても住宅は売らずに夫婦の片方が住み続けたいと考えていたとします。
ところが上記のケースと同様に財産分与で50%をもう片方に渡さなければならないのに、支払うべき動産(貯金や動産)が足りなくて支払えないというケースも出てきます。
家には住み続けたいが配偶者に支払うべき現金がなければ、不本意ではあっても家を売却するという結論になります。
3、住宅のローンが払い続けられない
夫婦で購入した住宅のローンが残っており、離婚後も払い続けなければならないケースです。
どちらか一方がローンを払い続けられるのなら問題はありませんが、多くのケースでは不可能という事になって住宅を売却する事になります。
住宅ローンは夫婦共働きでも支払いに苦労するもので、離婚して独身になった場合は滞納が続いてローンが破綻したという例も少なくありません。
離婚で家を売るならチェックしておきたい5つの事!
夫婦の離婚で家を売りたいと考えているのであれば、次の5つの事をチェックしてみましょう。
1.マイホームの価格査定
住宅を売却すると決める要素のトップが「いくらで売れるか?」です。
どんなに素晴らしい豪華邸宅でも、必ず高く売れるとは限りません。
現在の不動産相場や我が家の時価を知る為には、不動産会社で査定して貰うという方法が効率的です。
住宅の査定は地元の不動産会社に依頼する事もできますし、インターネット利用で有名不動産会社に無料査定して貰う事も可能です。
ちなみにマイホームの査定は1社だけでなく、複数業者(3社程度)に依頼すると平均的な価格を知る事ができます。
2.住宅ローンの状況確認
住宅を売却するか否かの判断では「ローンの支払状況」が大きな意味を持ちます。
ポイントは「住宅ローンの残額がいくらあるか?」です。
ローン残額を知るには返済予定表を確認するか、住宅ローンを契約している銀行やローン会社に問合わせするといいでしょう。
ローンの残額はこれから支払わなければならない借入金ですが、住宅を売却するとなると一括返済しなければならない場合もあるので非常に重要です。
3.査定価格とローン残額の比較
マイホームの査定価格と住宅ローンの残額が判明したところで、「査定価格」と「ローン残額」を比較してみます。
たとえば住宅の査定価格が2000万円でローン残額が1000万円なら、差し引き1000万円が手元に残ります。
逆に査定価格2000万円、ローン残額が3000万円なら、差し引き1000万円の不足です。
査定額とローン残額がほぼ同じならば差し引き0円と考えます。
4.差し引き金額で売却判断
住宅の査定価格とローン残額の差し引き金額から、次のように売却判断の目安を立てます。
・差し引き金額がプラスなら売却を検討
・差し引き金額がマイナスなら売却を見合わせ
・差し引き金額がゼロなら売却を考慮に入れる
とてもシンプルな判断方法ですが、まずはこの方針で売却が是か非かを話合ってください。
5.住宅売却のシミュレーション
住宅売却の判断目安が分かったら、今後のシミュレーションをします。
たとえば差し引き金額がプラスなら「手元に残ったお金をどう分けるか」、マイナスなら「ローン残額をどう支払うか」、ゼロなら「売却してローン完済するか、売らずにローン残額をどう支払うか」というシミュレーションです。
このシミュレーションはどんぶり勘定でやるのではなく、細かく計算して検討する事が重要です。
離婚で家を売る時に知っておきたい注意点
夫婦も離婚すれば他人になるわけで、「別れた後はもうこの家には住みたくない」と感じたとしても仕方がありません。
そこでスッパリと家を売って、前向きに新生活に臨みたいとなるのも当然の成り行きです。
ただし、家を売るというのは事前に考えているよりも大変な部分もあります。
離婚で家を売った場合、どんな事が起こるのかを知らないと損をする事もあるのです。
家が売れるとは限らない
都心の一等地や高級住宅街なら問題ありませんが、交通アクセスや周辺環境によっては家が売れない事もあります。
仮に不動産会社に販売を委託しても「儲けが薄い」と判断されれば、通り一遍の営業だけで放置され家が売れないという事態に陥るケースも少なくありません。
実際にマイホームを売る決断をして業者に委託したのに2~3年も売れなかったという事例もみられます。
持ち主が売ると決めても、すぐに売れない場合がある事も覚悟しておいてください。
売却価格が予想より安い
住宅というのは住人にとって何の問題がなくとも、第三者が客観的に眺めると欠点が見えてくる事もあります。
その為、持ち主から見れば「まだ十分に住める家」でも、他人から見ると新築と比べて「かなり古びている」となる事が多いようです。
築年数が1~3年程度の住宅なら大きな問題はありませんが、ある程度の築年数が経過した家であれば売却価格が予想外に安くなる事もあり得ます。
諸経費で赤字になる
家を売る時に最初に考えるのは「いくらで売れるのか」という事でしょう。
確かに住宅の売却価格は重要ですが、売却に関わる諸経費というのも見落としてはいけません。
家を売却する際に必要な主な諸経費としては、印紙税・仲介手数料・登記費用(司法書士経費)・事務手数料(ローン繰上げ用)などがあります。
ちょっと馴染みの薄い用語が多いのですが、住宅が1000~1500万円程度で売却できた場合で50万円程度必要と考えればいいでしょう。
もし「50万円程度なら問題ない」という人ならば構いませんが、離婚で1円でも多く捻出したいという人にとっては痛い赤字になるかもしれません。
次に住む家が必要になる
マイホームを売ると次に住む家が必要になります。
実家や社宅などの当てがあれば別ですが、新たにマンションやアパートを賃貸するとなると費用が必要です。
家を売却する場合はこうした費用に加え、引っ越し費用や新居の家財などの費用も見込んでおく必要があります。
夫婦生活では1つあれば十分だった家電や家具も、離婚して別々に生活するとなると買い足さなくてはなりません。
こうした費用の予算も準備しておかないと、家を売却した途端に困ることになるので注意してください。
見逃がしがちなマイホーム売却に必要な費用!
離婚や財産分与でお金が必要、だからマイホームを売却するというケースは多数見られます。
住宅(家やマンションン)を売却すれば利益が得られ、ローン完済や財産分与の問題も解決するというのなら何ら問題はありません。
ところが、住宅の売却は利益が得られるだけでなく、様々な諸経費も必要となってくるのです。
仲介手数料
不動産業者を通してマイホームを売却した場合、業者に支払う仲介手数料が発生します。
仲介手数料とは文字通り「不動産の売買を仲介した手数料」で、その価格は原則として次のような計算式が定められています。
〔取引価格(売却価格)×3%+6万円+消費税〕
計算式だけ見るとピンと来ないという人もいるでしょうが、実際の例を挙げてコストを見てみると次のようになります。
住宅の売却価格(取引価格)…仲介手数料
500万円…22万6800円
1000万円…38万8800円
2000万円…71万2800円
3000万円…103万6800円
4000万円…136万800円
5000万円…168万4800円
税金(譲渡所得税)
住宅に限らず、何かを売って利益を得れば税金が発生します。
家やマンションなどの不動産を売却した場合も、利益が出ると「譲渡所得税」という税金を納める必要があります。
この譲渡所得税は売却益が3000万円を超えた場合に課せられるもので、住宅の売却額から取得費(購入費用)から譲渡費用を差し引いた金額を指すものです。
差し引き3000万円以上の利益がなければ課税はありませんが、明らかに3000万円を超しそうな場合や微妙なボーダーラインの場合はしっかり計算しておきましょう。
税金(印紙税)
印紙税とは財産を移転する際の証明作成に掛かる税金です。
住宅を誰かに売却すると財産が移転する事になるので、売買契約書に印紙を貼るという形で納税が必要になります。
その納税額は500万円以下で2000円、1000万円以下で1万円、5000万円以下で1万5000円、1億円以下で4万5000円というように売却額に比例して高くなっていきます。
もし住宅の売却額が3000万円であれば印紙税は1万5000円ですが、契約書を売り主・買い主の各1通ずつ作成すれば納税額は2倍になります。
その他の費用
抵当権抹消登記費用(1万円~1万5000円程度)
住宅ローン事務手数料(3000円~5万円程度)
こうした住宅の売却に必要な諸経費は、売却価額全体に比べるとわずかな金額と思えるかもしれません。
しかし、現実に住宅を売却してみるとローン残額の支払いや新居への引っ越し費用などで意外に出費が増えて諸費用の捻出にも苦労する事があるのです。
住宅の売却を計画する場合は、このような諸費用も予算に含めておきましょう。
離婚で家を売る時に必要な書類
離婚で家を売る場合、夫婦で協力して手続きを進めるのが難しいケースもあります。
夫(妻)のいずれかが単独で売却したり、お互いに連絡が付きにくい状態で売却しなくてはならないという状況の場合は事前に必要書類を確認して準備しておきましょう。
登記済権利証
いわゆる家の権利書と呼ばれるもので、住宅の所有者である事を証明する書類です。
(平成17年以降に住宅を購入した場合は登記識別情報を使用します。)
売却する住宅の内容確認や登記に必要で、この書類がないと住宅を売却する事はできません。
印鑑証明書
住宅を売却する際に法務局に提出する書類で、区市町村役所で取得する事ができます。
もちろん売却する人ではなく、実際の家の所有者本人のもので3カ月以内の日付のものが必要です。
合わせて印鑑登録した実印(印鑑)も必要となります。
なお、住宅が共有名義であれば共有者全員の分が必要です。
固定資産税評価証明書
住宅の固定資産税を確認する為に必要となる書類です。
もし、なければ固定資産税納税通知書でも構いません。
身分証明書
本人である事を確認する為に必要な書類です。
住民票
住宅の登記上の住所と現住所が異なる場合に必要となる書類です。
3カ月以内の日付のものが必要となります。
ローン残高証明書
住宅ローン返済中の場合に必要となる書類です。
ローン返済予定表でも構いません。
銀行口座の書類
住宅の売買が完了したら売却価格が振り込まれる口座の書類です。
その他の書類
土地測量図・境界確認書
一戸建て住宅の場合は必要になります。
建築確認証・検査済証
住宅が建築基準法に適合している事を証明する書類。
建築設計図書・工事記録書
住宅の設計と工事の状況を確認する書類。
マンション管理規約・使用細則
マンション売却に必要となります。
マンション維持管理関連書類
管理費、修繕積立金、管理組合費などを確認。
耐震診断報告書・アスベスト使用調査報告書
診断済であれば提示。
購入時の契約書
住宅購入時の契約書があれば提示。
重要事項説明書
住宅購入時のものがあれば提示。
必要書類がなければ?
住宅売却に当たっては、絶対に必要な書類と提示できればメリットがある書類の2種類があります。
離婚の別居などで大切な書類をしまい込んだり見失う事が無いよう、住宅の売却を決めたら早い時期にしっかりと揃えて保管しておくようにしてください。
夫婦のうちのいずれかが家を出て別の賃貸住宅やマンションに転居する場合、妻が遠い地域の実家に帰る場合などは注意が必要です。
いざという時に困らないよう、不動産業者や司法書士のアドバイスを受けて準備しましょう。
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